雲仙火山のマグマ供給系とマグマ蓄積過程の解明

 <研究の背景>

 火山はひとたび噴火すると、甚大な被害をおよぼすことから、火山噴火の予知は火山列島に住むわれわれの切実な願いです。従来さまざまな研究が行われ、火山噴火の前兆については検知が可能になりつつあります。しかし、マグマ供給系(マグマ溜りや火道など)やマグマ上昇プロセスに未解明な点が多いため、確度の高い予知は容易ではありません。特に、1990年ー1995年雲仙噴火や2000年三宅島噴火のように、噴火活動が長期間になったり過去の噴火とは異なる噴火活動になったりした場合、活動の推移(どのような噴火に発展し、どのような噴火災害が発生するのか?噴火活動はいつまで続くのか?)を予測することはきわめて困難です。このことから、今後はマグマの蓄積・上昇・噴火プロセスの物理化学モデルを作り、それに基づいた火山活動の定量的予測の実現が強く望まれています。そのためには、まずマグマ溜りや火道などのマグマ供給系の位置・形状・大きさ・物性と、マグマ溜りにおけるマグマ蓄積率(マグマの収支)を知る必要があります。本センターでは、地震や地殻変動の観測データから雲仙火山のマグマ供給系の高解像度イメージングとモデル化、再びマグマ蓄積期に入ったと考えられる雲仙火山深部のマグマ供給率を推定し、次の雲仙火山の噴火に至る準備過程の解明を目的としています。

<地震波速度トモグラフィ>               <圧力源位置推定>

   

<反射体イメージング>

       

<研究結果>

 今までに地震活動の様式や速度構造トモグラフィ、反射体イメージング、地殻変動観測による圧力源位置推定の研究が行われてきました。その結果、

1.地震活動域は東側へ向かって浅くなっている。

2.地震活動域の下部では地震波速度が遅く、マグマの通り道である可能性が示された。

3.雲仙火山下部には地震波を強く反射散乱するものが分布している。

4.マグマを供給する圧力源の位置と膨張収縮が明らかになった。

以上のことから、雲仙火山のマグマ供給系がより明確にイメージされました。