熊本県中部では,昨年10月末以降,日奈久断層の北端付近で顕著な内陸地震活動が続いている.一連の活動におけるこれまでの最大地震は,本年6月8日のM5.3(Mjma4.8)である.
本年6月の活動域近傍で,9月25日11時15分にM4.4(Mjma4.0),同日11時23分にM4.2(Mjma3.8)の地震が発生した.当センターでは,震源域周辺に9点の臨時観測点を設置して稠密観測を実施しており(図1),これらの地震について精度の高い震源分布と発震機構解を得た(図2).
6月の活動域は,北東−南西約5km,深さ7〜10kmのほぼ鉛直な面上にあり,6月8日の本震は活動域のほぼ中央付近で発生した.本震の近傍には余震の少ない領域が認められ,これが本震時の破壊域であると考えられる.活発な余震活動は,これを取り囲むようにドーナッツ状に発生しており,6月10日の最大余震は余震域の北東端で発生した.
9月25日の地震は,いずれも6月の活動域の縁(上端)で発生しており,6月8日の地震の余震であると考えられる.9月25日の地震の発震機構は,北北東−南南西走向の節面を持つ横ずれ型であり,節面のディップ方向が異なるものの,6月8日の本震に類似している.したがって,9月25日の地震は,6月の破壊域がさらに浅部へ伸展したものと推定される.