1)雲仙普賢岳噴火の測地学的研究
雲仙普賢岳の噴火に伴う普賢岳山体や溶岩ドームおよびその周辺の地殻変動を傾斜計,GPS,水準測量で観測し,マグマの噴出および冷却過程を研究している.2)火山噴火予知の基礎研究2001年4月10-11日雲仙岳水準測量(仁田・アザミ谷路線)
全国各地の火山地域でGPSや傾斜計,水準測量による地殻変動の観測,重力の測定を実施し,火山噴火予知のための基礎的調査研究を実施している.特に2000年3月31日に噴火した北海道有珠山では,噴火前から現地入りして観測を開始し,現在も傾斜計による地殻変動の計測・研究を実施している.また,2000年6月から活動を始めた三宅島でも活動初期から現地観測を開始し,GPSを用いた地殻変動の観測や臨時地震観測点を設置した研究を実施している.これらの観測研究結果は,逐次火山噴火予知連絡会にも報告され,火山活動を予測する重要な判断材料となっている.3)南極人工地震観測用ペネトレータ型地震計の開発三宅島における火山観測:2001年5月14〜21日(地震観測用ロガー設置),7月15〜21日(ロガーデータ回収・GPS測量),9月15〜21日(ロガーデータ回収)
伊豆半島東部におけるGPS稠密観測:2001年 7月9日〜14日
南極氷床上のクレバス帯等の地上からは到達困難な地域にヘリコプターから上空投下し,人工地震を観測したのち,ヘリコプタ上から無線でからデータを回収するシステム(南極ペネトレータ型地震計)の開発を行っている.第43次南極観測隊(夏隊)により2002年1月に実施される「東南極リソスフェアの構造と進化研究計画(SEAL計画)」における人工地震探査での使用に向けて開発は最終段階を迎え,投下実験も実施されている.4)アムールプレートの測地学的調査研究2000年4月23〜27日 富山県立山におけるペネトレータ投下実験,6月15〜18日 仙台におけるペネトレータ試験,6月25〜30日 南極観測隊夏季訓練
10月16〜19日東京ヘリポートにおけるペネトレータ試験 10月21〜26日 ペネトレータ投下試験(茨城県守谷町)
10月30〜11月1日 ペネトレータ試験および「しらせ」積載,11月28日〜2002年3月28日 南極大陸における人工地震実験
中華人民共和国天津市,吉林省長春市,山東省青島市および山西省太原市において,国家地震局第一地殻變動観測中心(天津市)と共同でGPSによる地殻変動観測を実施し,韓国の研究者とも共同で中国中北部からロシアにかけて広がるアムールプレートの動きを調査研究している.アムールプレートの西端は九州を含む西日本一帯に達しており,中部日本で他のプレートと衝突している.1995年1月の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)もこのアムールプレートの東進に伴う,地殻応力増加によって発生したと考えられている.このプレートの動きを把握することは,西日本大地震の発生のメカニズムの解明に重要な情報を提供すると期待される.5)内陸で発生する地震の観測研究
微小地震観測網の整備を進めるとともに,この観測網による地震データを用いて,内陸で発生する地震の特徴等の研究を行っている.6)人工地震を用いた地下構造探査
また,全国の大学と共同で北海道日高地域の50点に臨時地震観測点を設置し,北海道地方に発生する地震を観測するとともに,その地下構造を研究を行った.九州大学は鹿児島大学と共同で,芽室町栄と幕別町豊岡の2地点に地震観測点を設置し,衛星テレメータを用いて全国の大学向けに観測データを発信していた.本年度は最終年にあたり,同装置の撤収作業を実施した.
九州地区では,1999年10月31日から熊本県中部の日奈久断層系と布田川断層系交点付近で群発地震が発生した.そこで,震源域周辺に400MHz無線テレメータを使った観測点を1点,現地収録の観測点を3点設置し計4点で余震観測を開始した.この観測は2000年6月のM4.9の地震の発生に伴い,さらに衛星通信テレメータ1点,現地収録点6点増強して,現在も観測中である.
また,2000年に新設した日奈久断層を横断するGPS観測線(11観測点)において,地殻変動を調べるため,繰り返し測定を行った.日奈久断層GPS観測:2001年10月12日〜14日
北海道合同地震観測(芽室町栄・幕別町豊岡観測点撤収作業):2001年 8月30日〜9月2日
東海沖から中部地方にかけてのフィリピン海プレートの沈み込みの構造及び中部日本を構成する島弧地殻・上部マントル構造を解明するための大規模な海陸合同構造探査が,2001年8月に実施された.この探査の海域部については海洋科学技術センターが担当し,70台の海底地震計とエアガンショットによる反射法・屈折法地震探査を実施した.一方,陸域における探査は九州大学を含む全国の大学・関係諸機関が共同して行った陸域部の測線は,静岡県磐田郡福田町から石川県羽咋郡志雄町までの全長約260kmで,5発の人工地震と320台の地震計で探査を実施した.7)中央構造線断層帯の深部構造と現在の運動様式に関する測地学的研究東海・中部地方における陸域深部地殻構造探査:2001年8月21〜26日
高知大学の田部井助教授を代表とする研究チームを結成し,西日本を東西に横断する日本最大の活断層群である中央構造線の測地学的研究を行っている.現在の地震活動は低調あるが,,地質学的・地形学的調査から推定された過去の活動履歴(右横ずれ数メートル/千年)から判断し,将来再び地震活動が活発化することはほぼ間違いがない.この断層群を南北に横切る測線(約100km)に30台のGPS受信機を設置して,毎年の地殻変動を観測している.中央構造線GPS観測:2001年 9月27日〜10月9日
(論文)
IWASAKI Takaya, KATO Wataru, MORIYA Takeo, HASEMI Akiko, UMINO Norihito, OKADA Tomomi, MIYASHITA Kaoru, MIZOGAMI Tomoko, TAKEDA Tetsuya, SEKINE Shutaro, MATSUSHIMA Takeshi, TASHIRO Katsuya, MIYAMACHI Hiroki(2001):Extensional structure in northern Honshu Arc as inferred from seismic refraction/wide-angle reflection profiling,Geophysical Research Letters,28,12,2329-2332,(American Geophysical Union)(その他)呉 新華・田中 穣・松島 健・荒生公雄・大石 哲・小司禎教・島田誠一(2001):火山地域におけるGPS測位に及ぼす局地的な水蒸気変動の影響について,電子情報通信学会論文誌,J84-B,2149-2159.
木股文昭・宮島力雄・高山鐵朗・山本圭吾・内田和也・中村めぐみ・松島健・平野舟一郎・八木原寛・立花憲司・上田英樹・佐藤峰司・植木貞人・辻浩・小山悦郎・寺田暁彦・森
済・鈴木敦生・中坊真, 2001,岩手火山における水準測量による圧力源の推定( 1998年7月〜2000年5月),京都大学防災研究所年報第44号B-1,353-363.
松島 健・清水 洋・植平 賢司・松尾 のり道(2001):水準測量・GPS測量から判明した雲仙火山の再膨張について,地球,23,8,540-544,(海洋出版)栗山 都・松本 聡・松島 健・清水 洋(2001):雲仙火山の地震波反射面,地球,23,8,535-539,(海洋出版)
九州大学地震火山観測研究センター, 2001, 九州の地震活動(2000年11月〜2001年4月), 地震予知連絡会会報, 66, 513-523.
九州大学地震火山観測研究センター, 2002, 九州の地震活動(2001年5月〜2001年10月), 地震予知連絡会会報, 67, 464-472.
九州大学地震火山観測研究センター・北海道大学地震火山研究観測センター・東京大学地震研究所, 2002, 2000年有珠山噴火で観測された傾斜変動について,火山噴火予知連絡会会報, 77, 39-42.
松島 健・渋谷 和雄・金尾 政紀・戸田 茂・SEAL計画ジオトランセクトグループ(2001):南極構造探査用ペネトレータ地震計の開発,地球惑星科学関連学会合同大会,Ss-004宇津木 充・田中 良和・神田 径・松島 健(2001):口永良部島火山における空中磁気測量,地球惑星科学関連学会合同大会,Eq-P003
及川 純・三宅島火山総合観測班(GPS観測グループ)・渡辺 秀文(2001):GPS測量でとらえた2000年9月以降の三宅島における地殻変動,地球惑星科学関連学会合同大会,V0-034,
加藤 照之・岩国 真紀子・小竹 美子・GPS大学連合(2001):アジア〜西太平洋のテクトニクスとGPS観測網の役割,地球惑星科学関連学会合同大会,S0-P005
岩崎 貴哉・足立 啓二・森谷 武男・平 貴昭・宮下 芳・FATHI Ismail・松島 健・宮町 宏樹(2001):北海道日高衝突帯横断屈折法・広角反射法地殻構造探査,地球惑星科学関連学会合同大会,Sz-014
田部井 隆雄・恵口 泰秀・高谷 卓司・橋本 学・宮崎 真一・細 善信・平原 和朗・木股 文昭・松島 健・越智 久巳一・加藤 照之・田中 寅夫(2001):GPS速度場から推定した中央構造線の深部構造とすべり分布,地球惑星科学関連学会合同大会,Sn-011
渋谷 和雄・金尾 政紀・松島 健・村上 寛史・戸田 茂・宮町 宏樹・筒井 智樹・SEAL計画ジオトランセクトグル-プ(2001):「東南極リソスフェアの構造と進化研究計画(SEAL計画)」に関連した構造探査用機器開発,地球惑星科学関連学会合同大会,Ss-P007,
田中 良和・宇津木 充・茂木 透・松島 健・橋本 武志・長谷 英彰(2001):阿蘇火山における空中磁気測量,地球惑星科学関連学会合同大会,Eq-P004
戸田 茂・宮町 宏樹・筒井 智樹・松島 健・金尾 政紀・福田 洋一(2001):JARE41人工地震実験でおこなったGPS及び重力測定,地球惑星科学関連学会合同
大会,K0-P004宇津木 充・田中 良和・神田 径・松島 健(2001):口永良部島火山における空中磁気測量(C41-P122),地球電磁気・地球惑星圏学会講演会,C41-P122
宇津木 充・田中 良和・神田 径・松島 健(2001):口永良部島火山における空中磁気測量,日本火山学会秋季大会s,166
松島 健・内田 和也・清水 洋・植平 賢司・松尾 のり道・松本 聡(2001):水準測量データから推定される雲仙岳深部のマグマ供給源について,日本火山学会秋季大会,108
大湊 隆雄・及川 純・松島 健・渡辺 篤志・中道 治久・渡辺 秀文・長田 昇(2001):三宅島における稠密地震観測,日本火山学会秋季大会,21
松島 健・大湊隆雄・及川純・渡邉篤志・中道治久・渡辺秀文・長田昇(2001):稠密地震観測による三宅島浅部構造の推定(序報),日本地震学会秋季大会
宮町宏樹・戸田 茂・松島 健・高田真秀・高橋康博・金尾政紀(2001):東南極みずほ高原における屈折法地震探査実験(序報)−第43次日本南極地域観測隊(2001-2002)− ,日本地震学会秋季大会
三宅島火山総合観測班(GPS観測グループ)(2001):GPS稠密観測網でとらえた三宅島火山における脱ガス期の地殻変動,日本地震学会秋季大会
東海・中部陸域地震探査研究グループ(2001):東海・中部地方における陸域深部地殻構造探査 ,日本地震学会秋季大会
TODA S. , MIYAMACHI H. , MATSUSHIMA T. , KANAO M. , FUKUDA Y.(2001):Gravity Survey on the Mizuho Plateau, East Antarctica: Results from JARE 41 (2000),
SEAL Project (abs.),Gondwana Research , Special Issue on Rodinia, Gondwanaand Asia (ISRGA Volume),4,4,802-802,(International Association for Gondwana Research)戸田 茂・宮町宏樹・筒井智樹・村上寛史・松島 健・金尾政紀・福田洋一(2001)みずほ高原における構造探査(JARE41),第21回南極地学シンポジウム,21
宮町宏樹・戸田 茂・松島 健・高田真秀・高橋康博・金尾政紀(2001):東南極みずほ高原における屈折法地震探査実験(序報),第21回南極地学シンポジウム,P22
松島 健・SEAL人工地震グループ(2001):43次みずほ高原での人工地震探査に関連した機器開発,第21回南極地学シンポジウム,P23
九州大学地震火山観測研究センター, 九州の地震活動,第143回地震予知連絡会(2001年5月21日).
九州大学地震火山観測研究センター, 九州の地震活動,第144回地震予知連絡会(2001年8月20日).
九州大学地震火山観測研究センター, 九州の地震活動,第145回地震予知連絡会(2001年11月19日).
九州大学地震火山観測研究センター, 九州の地震活動,第146回地震予知連絡会(2002年2月18日).
九州大学地震火山観測研究センター, 雲仙岳火山活動状況,第89回火山噴火予知連絡会(2001年5月28日).
九州大学・東京大学・北海道大学,有珠山周辺の傾斜変動,第89回火山噴火予知連絡会(2001年5月28日).
九州大学地震火山観測研究センター, 雲仙岳火山活動状況,第90回火山噴火予知連絡会(2001年10月22日).
九州大学・東京大学・北海道大学,有珠山周辺の傾斜変動,第90回火山噴火予知連絡会(2001年10月22日).
九州大学地震火山観測研究センター, 雲仙岳火山活動状況,第91回火山噴火予知連絡会(2002年2月1日)
九州大学地震火山観測研究センター,日向灘(豊後水道)の地震について, 第87回地震調査委員会(2001年5月2日)
九州大学地震火山観測研究センター,諫早市周辺の地震活動について , 第88回地震調査委員会(2001年6月13日)
文部省科学研究費・基盤研究(B)(平成13-14年度),三宅島火山の陥没カルデラ形成過程とマグマ供給系の解明 (代表者:渡辺 秀文)東京大学地震研究所 特定共同研究(A),分担,島弧地殻の変形過程に関する総合集中観測(代表 吉井敏尅)
東京大学地震研究所 特定共同研究(B),分担,九州・琉球背弧の深部構造とテクトニクスの研究(代表 鈴木貞臣)
東京大学地震研究所 特定共同研究(B),分担,地震波形データの準リアルタイム解析システムの研究(代表 堀内茂木)
国立極地研究所共同研究(平成12〜14年度),分担,人工地震探査によるリュツォ・ホルム岩体の地殻構造の研究(代表者:伊藤 潔)全8名
京都大学防災研究所 特定共同研究,分担,南海トラフと中央構造線における歪配分の解明に関する研究(代表者田部井隆雄)
財団法人・東京海上各務記念財団 受託研究(平成12年度〜)稠密観測に基づく布田川−日奈久断層系の地殻活動と3次元構造の研究(代表者 清水 洋)
日本地震学会,日本火山学会,物理探査学会,日本測地学会
日本学術会議測地学研究連絡委員会 地殻変動・海水準小委員会 委員東京大学地震研究所 地震予知協議会 観測技術専門委員会 委員
東京大学地震研究所地震予知研究協議会計画推進部会委員
第43次南極地域観測隊員(2001年8月〜2002年3月)
日本地震学会 代議員(2000年4月〜)
2001年11月28日〜2002年3月28日 南極地域