定期火山情報

第12号

平成9年12月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 11月の雲仙岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。この期間,平成新山の形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震は少ない状態で推移しましたが,傾斜変動を伴う火山性微動は2回観測しました。
 12月に入ってからも,火山活動は落ち着いた状態が続いています。

2  震 動 観 測
 11月の火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形及び落石震動の発生回数は第1表のとおりです。


第1表 火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形,及び落石震動の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形落石震動
上旬3(4)0(0)0(0)7(1)
中旬1(3)2(0)0(0)0(0)
下旬3(1)0(1)0(0)3(3)
月合計7(8)2(1)0(0)10(4)

(1) 火山性地震
 11月の火山性地震の発生回数は7回でした。島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)を4回観測し,普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)を3回観測しました。
 12月に入ってからは9日までに火山性地震は観測していません。
(2) 火山性微動
 11月は11日と13日に火山性微動を2回観測しました。いずれも傾斜変動を伴う火山性微動でした。
 12月に入ってからは,9日までには火山性微動を観測していません。
(3) 落石震動
 11月の落石震動回数は10回と少ない状態が続きました。
 12月に入ってからは9日までに落石震動を1回観測しました。

3  現地観測 
(1)温泉観測
 11月は雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しました。噴気,温度,ガス,pH,水位のいずれの観測値にも大きな変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
(1) 遠望カメラによる観測
 11月の遠望観測による噴煙の最高高度は100mで,噴煙量は依然少ない状態が続いています。なお,すべて白色,少量の噴煙でした。
(2) 測量による観測
 11月は24日に仁田峠第2展望所観測定点から,溶岩ドーム(平成新山)の形状を観測するための測量観測を行いました。前回(10月20日)と比べて大きな変化はありませんでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 11月は火山性微動による傾斜変動を2回観測しました。
 11日05時56分と13日07時21分に傾斜変動を伴う微動があり,いずれの傾斜計の変動も山頂の方向が高くなる傾きを示しました。
 傾斜変動を伴う火山性微動は,平成8年3月26日以来で,通算としては27回となりました。
 12月に入ってからは9日までに傾斜変動は観測していません。
(2)光波測量観測結果
 気象庁と通産省工業技術院地質調査所で行っている光波測量によると,普賢岳山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 一方,九州大学との共同観測による,平成新山西側隆起部南東側に設置している反射鏡(D2)と仁田峠第2展望台観測定点(T6)の斜距離変化は図1のとおり931日間に1.551m縮んでいます。これは溶岩ドームが収縮・自重沈下していることによるものです。


図1平成新山までの斜距離変化(1995/5/8-97/11/24:T6(仁田峠第2展望所)-D2)

6 土 石 流
 11月は土石流と思われる震動波形は観測していません。
 12月に入ってからも9日までは土石流と思われる震動波形は観測していません。

7 火山情報の発表状況
 11月10日の定期火山情報以降,火山情報の発表はありませんでした。