定期火山情報

第10号

平成9年10月13日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 9月の雲仙岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。この期間,平成新山の形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震は少ない状態で推移しました。
 10月に入ってからも,火山活動は落ち着いた状態が続いています。
 また,9月7日には,土石流と思われる震動波形を3回観測しましたが,これらによる被害は特にありませんでした。

2  震 動 観 測
 9月の火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形及び落石震動の発生回数は第1表のとおりです。


第1表 火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形,及び落石震動の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形落石震動
上旬2(3)0(0)0(0)7(0)
中旬4(3)0(0)0(0)4(0)
下旬6(17)0(0)0(0)0(2)
月合計12(23)0(0)0(0)11(2)

(1) 火山性地震
 9月の火山性地震の発生回数は12回でした。島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)を12回観測し,普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は観測されませんでした。
 10月に入ってからは12日までにA型地震を4回観測しています。
(2) 火山性微動
 9月は火山性微動を観測していません。
 10月に入ってからも,12日までに火山性微動は観測していません。
(3) 落石震動
 9月の落石震動回数は11回(前月は2回)とやや多い状態でした。
 10月に入ってからは12日までに落石震動を1回観測しています。

3  現地観測 
(1)温泉観測
 9月は25日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しました。噴気,温度,ガス,pH,水位のいずれの観測値にも大きな変化はありませんでした。
(2) 溶岩ドーム観測
 10月8日に溶岩ドーム(平成新山)の現地観測を実施しました。その結果,噴煙量は全般的に少なく,ドームの形状も変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
(1) 遠望カメラによる観測
 9月の遠望観測による噴煙の最高高度は300mで,噴煙量は依然少ない状態が続いています。なお,すべて白色,少量の噴煙でした。
(2) 測量による観測
 9月は24日に仁田峠第2展望所観測定点から,溶岩ドーム(平成新山)の形状を観測するための測量観測を行いました。前回(8月4日)と比べて大きな変化はありませんでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 9月は傾斜変動は観測していません。
 10月に入ってからも12日までに傾斜変動は観測していません。
(2)光波測量観測結果
 気象庁と通産省工業技術院地質調査所で行っている光波測量によると,普賢岳山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 一方,九州大学との共同観測による,平成新山西側隆起部南東側に設置している反射鏡(D2)と仁田峠第2展望台観測定点(T6)の斜距離変化は第1図のとおり870日間に1.526m縮んでいます。これは溶岩ドームが収縮・自重沈下していることによるものです。


第1図 平成新山までの斜距離変化(1995/5/8-97/9/24:T6(仁田峠第2展望所)-D2)

6 土 石 流
 9月の土石流と思われる震動波形(観測点:岩床山)は,7日に3時51分〜4時17分,6時21分〜7時02分及び7時46分〜8時22分の3回観測しました。これらによる被害は特にありませんでしたが,建設省雲仙復興工事事務所によると,水無川の砂防ダム等には,約4万立方メートルの土砂が堆積したとのことです。
 10月にはいってからは土石流と思われる震動波形は観測していません。

7 火山情報の発表状況
 9月10日の定期火山情報以降,火山情報の発表はありませんでした。