定期火山情報

第7号

平成9年7月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 6月の雲仙岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。この期間,平成新山の形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震は少ない状態で推移しました。
 7月に入ってからも、火山活動は落ち着いた状態が続いています。

2  震 動 観 測
 6月の火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形及び落石震動の発生回数は第1表のとおりです。


第1表 火山性地震,火山性微動,火砕流と思われる震動波形,及び落石震動の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形落石震動
上旬6(3)0(1)0(0)2(1)
中旬1(2)0(0)0(0)1(0)
下旬2(3)0(0)0(0)2(0)
月合計9(8)0(1)0(0)5(1)

注意:雲仙岳測候所では平成3年の溶岩ドームの出現以来,噴出した溶岩の崩落による震動を火山性微動として計数してきました。しかし,これは「火山体内部でのマグマ(溶岩)等の動きに起因した震動」という火山性微動の定義にそぐわないため,溶岩の崩落が始まった平成3年5月まで遡り,崩落による震動を火山性微動とはしないこととしました。なお,山体内で発生したと考えられる震動はこれまでどおり「火山性微動」と表現します。
崩落による震動を,平成3年5月から平成7年2月までは,「溶岩の崩落による震動」と表現し,平成7年3月以降は,「落石震動」と表現して情報等に使用していくことにします。平成3年5月に遡って修正した火山性微動,溶岩の崩落による震動,落石震動の回数は第2表のとおりです。
なお,当所ではこれまでどおりあざみ谷震動観測点で,震動波形の振り切れ時間(25μm/s以上)30秒以上で火砕流と思われる震動波形と計数しますが,震動時間だけでは,火砕流の現象を判定することは適当でないことも考えられるため,後日調査をし,訂正することがあります。
第2表 火山性微動回数の修正表
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年計
旧微動回数1991年151399917659911939088911377138875618049345
新微動回数15139991763698000000806
溶岩の崩落回数000023011859088911377138875618048539
旧微動回数1992年15921273155111591019104811531135106576672324912733
新微動回数0000000000000
溶岩の崩落回数15921273155111591019104811531135106576672324912733
旧微動回数1993年185236472807642100110087425192942265816713
新微動回数0000000000000
溶岩の崩落回数185236472807642100110087425192942265816713
旧微動回数1994年50430010415429950845713738621581221044945
新微動回数0000000000000
溶岩の崩落回数50430010415429950845713738621581221044945
旧微動回数1995年60161018123931991240220
新微動回数022221192000030
溶岩の崩落回数601474
落石回数816102822791240116
旧微動回数1996年53880314446002116
新微動回数1010010000003
落石回数4387031344600281
旧微動回数1997年15612520
新微動回数0000101
落石回数15611519

(1) 火山性地震
 6月の火山性地震の発生回数は9回でした。島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は8回観測し,普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は1回観測しました。
 7月に入ってからは9日までにB型地震を2回観測しています。
(2) 火山性微動
 6月は火山性微動を観測していません。
 7月に入ってからも,9日までに火山性微動は観測していません。
(3) 落石震動
 6月の落石震動の回数は5回でした。
 7月に入ってからは9日までに落石震動を9回観測しています。

3  現地観測 
(1)温泉観測
 6月は16日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが大きな変化はありませんでした。小浜町山領において井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは8.1mで特に変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
(1) 遠望カメラによる観測
 6月の遠望観測による噴煙の最高高度は100mで,噴煙量は依然少ない状態が続いています。なお,すべて白色,少量の噴煙でした。
(2) 測量による観測
 6月は13日に仁田峠第2展望所観測定点から,溶岩ドーム(平成新山)の形状を観測するための測量観測を行いました。前回(4月28日)と比べて大きな変化はありませんでした。
 また,ドーム最上部の標高は,前回(6月4日)の観測と変化なく1,482mでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 6月は傾斜変動は観測されていません。
 7月に入ってからも9日までに傾斜変動は観測されていません。
(2)光波測量観測結果
 気象庁と通産省工業技術院地質調査所で行っている光波測量によると,普賢岳山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 一方,九州大学との共同観測による,平成新山西側隆起部南東側に設置している反射鏡(D2)と仁田峠第2展望所観測定点(T6)の斜距離変化は第1図のとおりで766日間に1295mm縮んでいます。これは溶岩ドームが収縮・自重沈下していることによるものです。


第1図 平成新山までの斜距離変化(1995/5/8-97/6/13:T6(仁田峠第2展望所)-D2)

6 土 石 流
 6月の土石流と思われる震動波形は28日09時40分〜10時00分の1回で,7月は9日までに9日02時27分〜02時34分と03時41分〜04時04分の2回でした。これは,平成8年8月14日以来約10ヶ月ぶりでした。なお,これらによる被害は特にありませんでした。

7 火山情報の発表状況
 6月10日の定期火山情報以降,火山情報の発表はありませんでした。


先号(第6号)の訂正
1:1ページ目 2.震動観測の(1)火山性地震の項のうち5行目
   「B型地震を2回観測しました。」を
   「B型地震を1回観測しました。」にする。
2:4ページ目 火山用語の解説の土石流と思われる震動波形の月別発生回数の表の総合計
   「125回」を
   「134回」にする
以上訂正お願いします。