定期火山情報

第10号

平成8年10月11日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 9月の雲仙岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。この期間,平成新山の形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震は上旬に21回とやや増加しましたが,中旬以降は少なくなり,火山性微動も少ない状態で推移しました。
 10月に入ってからも、火山活動は落ち着いた状態が続いています。

2  震 動 観 測
 9月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第1表のとおりです。

第1表 火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形
上旬21(4)4(0)0(0)
中旬4(3)1(3)0(0)
下旬4(5)1(1)0(0)
月合計29(12)6(4)0(0)

(1) 火山性地震
 9月の火山性地震の発生回数は29回でした。このうち島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は28回で,6日には震度2の有感地震を含む橘湾(先月の定期火山情報では震源を千々石町付近としていましたが,再験測の結果橘湾とします。)を震源とする地震を16回観測しました。
 普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は1回観測されました。
 10月に入ってからは10日まで火山性地震の発生はありません。

第1図 1996年9月の島原半島付近の震源の分布図
(2) 火山性微動
 9月は火山性微動が6回観測されました。これらの火山性微動は古い溶岩の崩落によるものでした。
 10月に入ってからは10日まで火山性微動の発生はありません。

3  現地観測 
(1) 機上観測
 9月24日に自衛隊の協力による上空からのヘリ観測を実施しました。南西斜面と南東斜面に9月1日,9月14日に発生した崩落跡が見られました。また,西部隆起部中央付近の溶岩塊は風化による崩落が見られました。その他は平成新山の形状には大きな変化はありませんでした。
(2) 温泉観測
 9月18日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しました。7月と8月の観測で検出されていた雲仙,大叫喚地獄の亜硫酸ガスは今回は検出されませんでした。小浜町山領において井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは6.85mで特に変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
 9月の遠望観測による噴煙の最高高度は400mで,噴煙量は依然少ない状態が続いています。17日から18日にかけて噴煙量がやや増加しました。観測できた日の噴煙は全て白色,少量でドーム頂上付近からのものでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 9月は傾斜変動は観測されていません。
 10月に入ってからも10日までは傾斜変動は観測されていません。
(2) 光波測量観測
 気象庁と通産省工業技術院地質調査所で行っている光波測量によると,普賢岳山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 一方,九州大学との共同観測による,平成新山西側隆起部北西側に設置している反射鏡(D1)と礫石原観測定点(T5)の斜距離変化は第2図のとおりで519日間に862mm縮んでいます。また平成新山西側隆起部南東側に設置している反射鏡(D2)と仁田峠第2展望所観測定点(T6)の斜距離変化は第3図のとおりで516日間に1087mm縮んでいます。これらは溶岩ド−ムが収縮・自重沈下していることによるものです。


第2図 平成新山までの斜距離変化(1995/4/12-96/9/12:T5(礫石原)- D1)

第3図 平成新山までの斜距離変化(1995/5/8-96/10/5:T6(仁田峠第2展望所)- D2)

6 土 石 流
 9月は土石流と思われる震動波形は観測されていません。10月は10日までに土石流と思われる震動波形は観測されていません。

7 火山情報の発表状況
 9月11日以降,火山情報の発表はありませんでした。