定期火山情報

第5号

平成8年5月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 4月の雲仙普賢岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。この期間,溶岩ドームの形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震と火山性微動はともに少ない状態で推移しました。
 5月に入ってからも、火山活動は落ち着いた状態が続いています。

2  震 動 観 測
 4月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第1表のとおりで,島原半島付近の火山性地震の震源分布は第1図のとおりです。

第1表 火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形
上旬2(2)0(1)0(0)
中旬1(4)0(5)0(0)
下旬4(4)0(2)0(0)
月合計7(10)0(8)0(0)

(1) 火山性地震
 4月の火山性地震の発生回数は7回でした。このうち,有明海や橘湾など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は7回観測されました。また,普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は観測されませんでした。
 5月に入っても9日までの火山性地震の発生回数は,4回と少ない状態が続いています。

第1図 1996年4月の島原半島付近の地震の震源分布

(2) 火山性微動
 4月は火山性微動は観測されませんでした。
 5月に入ってから9日までに火山性微動を1回観測しました。これは火砕流と思われる震動波形でした。
(3) 火砕流
 5月1日03時36分に継続時間30秒の火砕流と思われる震動波形を観測しました。方向,到達距離は天候不良のため確認できませんでした。
 この火砕流は新たなマグマの噴出によるものではなく,古い溶岩ドームの一部が崩落したものと思われます。今年の2月10日から13日にかけて同様の原因による火砕流と思われる震動波形を6回観測しており,それ以来のものとなりました。

3  現地観測 
温泉観測
 4月18日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが,特に変化はありませんでした。小浜町山領において井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは8.65mで特に変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
 4月の遠望観測による噴煙の最高高度は100mで,噴煙量は依然少ない状態が続いています。観測できた日の噴煙は全て少量でド−ム頂上付近からのものでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 4月は傾斜変動は観測されていません。
 5月に入ってからも9日までは傾斜変動は観測されていません。
(2)セオドライト(経緯儀)による溶岩ド−ム観測結果
 この期間のセオドライト(経緯儀)を用いた観測による,溶岩ド−ムの状況は第2図,第3図のとおりで,溶岩ド−ムの形状に大きな変化はありません。


第2図 溶岩ド−ムの稜線変化(1996/4/4−4/22 仁田峠第2展望台)

第3図 溶岩ドームの標高変化(1993/12/7-1996/4/22:仁田峠第2展望台)

6 土 石 流
 4月は土石流と思われる震動波形は観測されていません。
 5月に入ってからも,9日までに土石流は観測されていません。

7 火山情報の発表状況
 4月1日以降,緊急火山情報,臨時火山情報の発表はありませんでした。
  火山観測情報は,4月30日までに123号を発表しています。