定期火山情報

第2号

平成8年2月13日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 1月の雲仙普賢岳の火山活動は,落ち着いた状態が続きました。
 この期間,溶岩ドームの形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震と火山性微動はともに少ない状態で推移しました。
 2月に入ってから,7日以降火口南東側で溶岩の崩落が観測され,10日と12日には,約1年ぶりに火砕流を観測しました。これらは溶岩ドームが風化して不安定になった部分が崩落しているものと考えられ,火山活動そのものは落ち着いた状態が続いています。

2  震 動 観 測
 1月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第1表のとおりで,島原半島付近の火山性地震の震源分布は第1図のとおりです。


第1表 火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の旬別回数
(カッコ内は,先月の回数)
火山性地震火山性微動火砕流波形
上旬4(1)2(0)0(0)
中旬0(10)2(0)0(0)
下旬2(2)1(0)0(0)
月合計6(13)5(0)0(0)

(1) 火山性地震
 1月の火山性地震の発生回数は6回でした。これらはすべて,有明海や橘湾など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)でした。普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は観測されませんでした。
 2月に入って12日までの火山性地震の発生回数は,4回と少ない状態が続いています。

第1図 1996年1月の島原半島付近の地震の震源分布

(2) 火山性微動
 1月は火山性微動を5回観測しました。このうち溶岩の崩落による微動が4回,崩落によるものではない微動が1回でした。
 2月は12日までの火山性微動の発生回数は28回で,すべて溶岩の崩落による微動でした。このうち5回は火砕流と思われる震動波形でした(10日16時37分:継続時間40秒,10日16時39分:継続時間40秒,12日06時07分:継続時間60秒,12日06時08分:継続時間40秒,12日17時23分:継続時間50秒,いずれも南東(赤松谷)方向に約1.5キロメートル流下)。

3  現地観測 
(1)機上観測
 1月は自衛隊ヘリによる上空からの観測は実施しませんでした。
(2)温泉観測
 1月24日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが,特に変化はありませんでした。小浜町山領における井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは9.2mで特に変化はありませんでした。

4  遠 望 観 測
 1月の遠望観測による噴煙の最高高度は200m(12日10時57分崩落による噴煙)でした。その他の観測された噴煙は,少量の噴煙でド−ム頂上付近からのものでした。

5  地殻変形観測
(1)傾斜計による観測結果
 1月は傾斜変動は観測されていません。2月も12日までに傾斜変動は観測されていません。
(2)セオドライト(経緯儀)による溶岩ド−ム観測結果
 この期間のセオドライト(経緯儀)を用いた観測による,溶岩ド−ムの状況は第2図及び第3図,標高の変化は第4図のとおりです。溶岩ドームの形状には大きな変化は見られませんでしたが,1月12日に新大野木場観測定点より実施した観測で,1月8日05時50分に発生した溶岩の崩落によると思われるごくわずかな稜線の変化を観測しました(第3図)。


第2図 溶岩ド−ムの稜線変化(1995/12/21-1996/2/7 仁田峠第2展望台)

第3図 溶岩ド−ムの稜線変化(1995/12/11-1996/1/26 新大野木場)

第4図 溶岩ド−ムの標高変化(1993/11/11-1996/2/7 仁田峠第2展望台)

(3)光波測量観測結果
 通産省工業技術院地質調査所と気象庁で行っている光波測量によると,普賢岳旧山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 また,九州大学との共同観測による溶岩ドームに設置した反射鏡との斜距離変化は第5図,第6図のとおりです。溶岩ド−ム西側隆起部南東側に設置されている反射鏡(D2)と仁田第2展望台観測定点の間は275日間に586mm,溶岩ドーム西側隆起部北西側に設置されている反射鏡(D1)と礫石原観測定点の間は283日間に570mm縮んでいます。これは反射鏡を設置した溶岩塊がずり落ちているものによると思われます。


第5図 溶岩ドームまでの斜距離変化(1995/5/8-1996/2/7:T6(仁田第2)−D2)

第6図 溶岩ドームまでの斜距離変化(1995/4/12-96/1/30:T5(礫石原)−D1)

6 降灰観測
 12月は雲仙岳測候所においては,降灰を観測しませんでした。
 1月も9日までは降灰を観測していません。

7 土 石 流
 1月は土石流と思われる震動波形は観測されませんでした。
 2月も12日までは土石流は観測されていません。

8 火山情報の発表状況
 1月1日以降,緊急火山情報,臨時火山情報の発表はありませんでした。
火山観測情報は,1月31日までに31号を発表しています。