定期火山情報

第9号

平成7年11月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 10月の雲仙普賢岳の火山活動は,中旬以降,南東方向へ小規模な崩落がありました。
 この期間,溶岩ドームの形状にはほとんど変化が見られず,火山性地震や火山性微動も少ない状態で推移しています。
 11月に入ってからも比較的落ち着いた状態が続いています。

2 震動観測
 10月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第1表のとおりで,島原半島付近の震源分布は第1図のとおりです。
 なお,ここで用いている地震微動等の回数は速報値であり,後日訂正されることがあります。

第1表 火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の月別回数
有感地震
回  数
無感地震
回  数
総 地 震
回  数
微動回数火 砕 流
震動回数
1月4318322602
2月08181162
3月01515100
4月02929180
5月02222120
6月03333390
7月16061310
8月12930 90
9月02121 90
10月01515120

(1) 火山性地震
 10月の火山性地震の発生回数は前月と比べやや減少しました。このうち,有明海や橘湾など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は10回観測しました。
 また、普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は5回観測されました。
 11月に入って10日までの地震回数は、5回と少ない状態が続いています。

第1図 1995年10月の島原半島付近の地震の震源分布

(2) 火山性微動
 10月の火山性微動の発生回数は12回で、先月と比べやや増加しました。これら  はすべて溶岩の崩落によるものでした。
 11月は10日までに溶岩の崩落による火山性微動が1回観測されました。

3  現地観測 
(1) 機上観測
 10月は11日と25日に自衛隊ヘリによる上空からの観測を実施しました。
 溶岩ドーム西部隆起部(旧第10溶岩ドーム)の中央付近の溶岩塊(通称:恐竜の背中状隆起)には,大きな変化は見られませんでした。また,周囲に新しい堆積物は見られませんでした。
(2) 温泉観測
 9月19日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが,特に変化はありませんでした。
(3) 井戸の水位
 10月26日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが,特に変化はありませんでした。小浜町山領における井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは8.0メ−トルで特に変化はありませんでした。

4 遠 望 観 測
 10月の遠望観測による噴煙の最高高度は300mで,23日08時05分に観測され,溶岩の崩落に伴う灰褐色の噴煙でした。なお,観測できた日のうち,7日14時50分,15日16時06分,18日08時49分,23日08時05分,08時30分,08時50分,09時00分,09時17分,11時24分,25日06時13分,11時15分,26日12時42分,15時43分,17時14分,17時48分の噴煙は,溶岩の崩落に伴う灰褐色の噴煙でした。これ以外は,少量の噴煙でド−ム頂上付近からのものでした。

5 地殻変動観測
(1) 傾斜計による観測結果
 10月は傾斜変動は観測されていません。11月も10日までに傾斜変動は観測されていません。
(2) セオドライト(経緯儀)観測による溶岩ド−ム観測結果
 この期間のセオドライト(経緯儀)を用いた観測による,溶岩ド−ムの成長の状況は第2図のとおりです。10月中旬から下旬にかけて発生した崩落により,南東部稜線の一部に変化が見られました。


第2図 溶岩ド−ムの稜線変化(1995/9/13-1995/11/2)

(3) 光波測量観測
 通産省工業技術院地質調査所と気象庁で行っている光波測量によると,普賢岳旧山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 また,九州大学との共同観測による溶岩ドームに設置した反射鏡との斜距離変化は第3図のとおりです。溶岩ド−ム北側崖錘に設置されている反射鏡(D1)と礫石原の間は185日間に375mm縮んでいます。これは溶岩ド−ムの沈降によるものと思われます。

第3図 溶岩ドームの斜距離変化(1995/4/12-10/14:T5(礫石原)−D1)

6 降灰観測
 10月は雲仙岳測候所においては,降灰を観測しませんでした。

7 土石流
 10月は土石流と思われる震動波形は観測されていません。11月は10日までに土石流は観測されていません。

9 火山情報の発表状況
 9月1日以降,緊急火山情報,臨時火山情報の発表はありませんでした。火山観測情報は,10月31日までに304号を発表しています。