定期火山情報

第７号

平成７年９月１１日１０時００分
雲仙岳測候所発表
火山名：雲仙岳

１　 概　況
　８月の雲仙普賢岳の火山活動は，比較的落ち着いた状態が続きました。
　この期間，溶岩ドームの形状にはほとんど変化が見られず，火砕流も２月１１日を最後に発生していません。また，火山性地震や火山性微動も少ない状態で推移しています。
　９月に入ってからも比較的落ち着いた状態が続いています。

２　火砕流
　８月は火砕流と思われる震動波形は，発生しませんでした。９月に入ってからも１０日までは発生していません。

３　震動観測
　８月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第１表のとおりで，島原半島付近の震源分布は第１図のとおりです。
　なお，ここで用いている地震微動等の回数は速報値であり，後日訂正されることがあります。

第１表　火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の月別回数
月有感地震
回　　数		無感地震
回　　数		総 地 震
回　　数		微動回数火 砕 流
震動回数
１月4318322602
２月08181162
３月01515100
４月02929180
５月02222120
６月03333390
７月16061310
８月12930 90

(１) 火山性地震
　８月の火山性地震の発生回数は前月と比べやや減少しました。このうち，有明海や橘湾など島原半島周辺で発生する比較的深い地震（Ａ型地震）は２８回観測しました。この中の最も大きなものは，１４日００時０８分に震度Tを記録したマグニチュード３．１の地震で，震源は橘湾（橘湾を震源とする有感地震は１９９３年８月１４日以来）と推定され，基準観測点（Ａ点，矢岳）での上下動最大振幅は１１μｍでした。
　また、普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震（Ｂ型地震）は２９日に２回観測されただけでした。
　９月に入って１０日までの地震回数は、１２回と少ない状態が続いています。


第１図　1995年8月の島原半島付近の地震の震源分布
（震源は福岡管区気象台による）

(２) 火山性微動
　８月の火山性微動の発生回数は９回で、先月に比べ減少しました。このうち，溶岩の崩落によるものが７回で，崩落によらないものが２回でした。
　また，９月は１０日までに火山性微動は観測されていません。

４　 現地観測　
(1) 機上観測
　８月は８日に自衛隊ヘリによる上空からの観測を実施しました。
　溶岩ドーム西部隆起部（旧第１０溶岩ドーム）の中央付近の溶岩塊（通称：恐竜の背中状隆起）には，大きな変化は見られませんでした。また，周囲に新しい堆積物は見られませんでした。
(2) 温泉観測
　８月２５日に雲仙地獄，小浜温泉の現地観測を実施しましたが，特に変化はありませんでした。
(3) 井戸の水位
　８月２５日に小浜町山領における井戸の水位観測を実施しましたが，井戸の深さは６．７メ−トルで特に変化はありませんでした。

５　遠 望 観 測
　８月の遠望観測による噴煙の最高高度は１００ｍで，８日１１時５５分・８日１６時・２１日１２時３０分・２８日０７時４５分・２９日０８時１２分に観測されました。なお，観測できた日のほとんどは少量の噴煙でド−ム頂部付近からのものでしたが，８日１１時５５分及び２９日０８時１２分の噴煙は，溶岩の崩落に伴う灰褐色の噴煙でした。

６　地殻変動観測
(1) 傾斜計による観測結果
　８月はわずかな傾斜の変化を１回観測しました。傾斜変動のあった時間頃，崩落によらない火山性微動を１回観測しました。９月は１０日までに傾斜変動は観測されていません。
(2) セオドライト（経緯儀）観測よる溶岩ドーム観測結果
　この期間のセオドライト（経緯儀）を用いた観測による，溶岩ドームの成長の状況は第２図のとおりです。溶岩ドームの形状には，ほとんど変化はありませんでした。また，溶岩ドームの標高変化は第３図のとおりです。


第２図　溶岩ドームの稜線変化(1995/7/25-1995/9/6）:仁田峠第２展望台より)

第３図　溶岩ドームの標高変化(1993/12/7-1995/9/6:仁田峠第２展望台より)

(3) 光波測量観測
　通産省工業技術院地質調査所と気象庁で行っている光波測量によると，普賢岳旧山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに，ほとんど変化はありませんでした。
　また，九州大学との共同観測による溶岩ドームに設置した反射鏡との斜距離変化は第４−１，２図のとおりです。仁田峠第２展望台−Ｄ２間は１２１日間に２９６ｍｍ縮み，礫石原−Ｄ１間は１４２日間に２４５ｍｍ縮んでいます。これは九州大学が行っているＧＰＳ観測により確認されている溶岩ドームの沈降によるものと思われます。なお，Ｄ１とは溶岩ドーム北側崖錘に，Ｄ２とは南東側にそれぞれ設置されている反射鏡です。

第４−１図　溶岩ドームの斜距離変化(1995/5/8-9/6:Ｔ６（仁田峠第２展望台）−Ｄ２）

第４−２図　溶岩ドームの斜距離変化(1995/4/12-9/1:Ｔ５（礫石原）−Ｄ１)

７　降灰観測
　８月は雲仙岳測候所においては，降灰を観測しませんでした。（なお、２４日から２６日にかけて桜島による降灰を観測しました。）

８　土石流
　８月は土石流と思われる震動波形を，３１日に１回（１２時０３分から１２時２２分）観測しましたが，被害はありませんでした。９月は１０日までに土石流は観測されていません。

９　火山情報の発表状況
　８月１日以降，緊急火山情報，臨時火山情報の発表はありませんでした。火山観測情報は，８月３１日までに２４３号を発表しています。