定期火山情報

第6号

平成7年8月10日10時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

1  概 況
 7月の雲仙普賢岳の火山活動は,比較的落ち着いた状態が続きました。
 この期間,溶岩ドームの形状にはほとんど変化が見られず,火砕流も2月11日を最後に発生していません。また,火山性地震や火山性微動も少ない状態で推移しています。
 8月に入ってからも比較的落ち着いた状態が続いています。

2 火砕流
 7月は火砕流と思われる震動波形は,発生しませんでした。8月に入ってからも9日までは発生していません。

3 震動観測
 7月の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生回数は第1表のとおりで,島原半島付近の震源分布は第1図のとおりです。
 なお,ここで用いている地震微動等の回数は速報値であり,後日訂正されることがあります。

第1表 火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の月別回数
有感地震
回  数
無感地震
回  数
総 地 震
回  数
微動回数火 砕 流
震動回数
1月4318322602
2月08181162
3月01515100
4月02929180
5月02222120
6月03333390
7月16061310

(1) 火山性地震
 7月の火山性地震の発生回数は前月と比べ増加しました。これは普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)が12日に22回とやや多発したためです。その中の最も大きなものは11時58分に震度Tを記録したマグニチュード2.7の地震で,基準観測点(A点,矢岳)での上下動最大振幅は24μmでした。なおB型地震は7月中に37回観測されています。また,有明海など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は24回観測しました。
 8月に入って9日までの地震回数は6回と少ない状態が続いています。

第1図 1995年7月の島原半島付近の地震の震源分布
(震源は福岡管区気象台による)

(2) 火山性微動
 7月の火山性微動の発生回数は,31回でした。このうち,溶岩の崩落によるものが19回で,特に3日は10回発生しており,これは降雨(日降水量180.5ミリ)により崩れやすくなったためだと思われます。また,崩落によらないものは,上旬5回,中旬7回,下旬0回の12回でした。
 また,8月は9日までに崩落による微動は2回発生し,崩落によらない微動は1回発生しています。

4  現地観測 
(1) 機上観測
 7月は25日に自衛隊ヘリによる上空からの観測を実施しました。
 溶岩ドーム西部隆起部(第10溶岩ドーム)の中央付近の溶岩塊(通称:恐竜の背中状隆起)には,大きな変化は見られませんでした。また,周囲に新しい堆積物は見られませんでした。
(2) 温泉観測
 7月18日に雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しましたが,特に変化はありませんでした。
(3) 井戸の水位
 7月18日に小浜町山領における井戸の水位観測を実施しましたが,井戸の深さは6.2メ−トルで特に変化はありませんでした。

5 遠 望 観 測
 7月の遠望観測による噴煙の最高高度は200mで,31日19時00分に観測されました。観測できた日のほとんどは少量の噴煙でド−ム頂部付近からのものでした。

6 地殻変動観測
(1) 傾斜計による観測結果
 7月はわずかな傾斜の変化を4回観測しました。傾斜変動のあった時間頃,崩落によらない火山性微動のみを1回,地震のみを2回,微動,地震両方を1回観測しました。 8月は9日までに傾斜変動は観測されていません。
(2) セオドライト(経緯儀)観測よる溶岩ドーム観測結果
 この期間のセオドライト(経緯儀)を用いた観測による,溶岩ドームの成長の状況は第2図のとおりです。溶岩ドームの形状には,ほとんど変化はありませんでした。また,溶岩ドームの標高変化は第3図のとおりです。


第2図 溶岩ドームの稜線変化(1995/6/16-1995/7/25):仁田峠第2展望台より)

第3図 溶岩ドームの標高変化(1993/12/7-1995/7/25:仁田峠第2展望台より)

(3) 光波測量観測
 通産省工業技術院地質調査所と気象庁で行っている光波測量によると,普賢岳旧山体に付けた反射鏡との斜距離は北側及び南側の測線ともに,ほとんど変化はありませんでした。
 なお,九州大学との共同観測による溶岩ドームに設置した反射鏡との斜距離変化は第4−1,2図のとおりです。仁田峠−D2間は76日で209mm縮み,礫石原−D1間は92日で146mm縮んでいます。これは九州大学が行っているGPS観測により確認されている溶岩ドームの沈降によるものと思われます。なお,D1とは溶岩ドーム北側崖錘に,D2とは南東側にそれぞれ設置されている反射鏡です。

第4−1図 溶岩ドームの斜距離変化(1995/5/8-7/25:T6(仁田峠)−D2)

第4−2図 溶岩ドームの斜距離変化(1995/4/12-7/13:T5(礫石原)−D1)

7 降灰観測
 7月は雲仙岳測候所においては,降灰を観測しませんでした。

8 土石流
 7月は土石流と思われる震動波形を,2日に1回(22時51分から23時18分),3日に3回(00時36分から00時56分,01時10分から01時34分,10時00分から10時57分)観測しましたが,いずれも被害はありませんでした。
 8月は9日までに土石流は観測されていません。

9 火山情報の発表状況
 7月1日以降,緊急火山情報,臨時火山情報の発表はありませんでした。火山観測情報は,8月9日までに221号を発表しています。