1 概 況
2 火砕流
この期間(1月〜3月)の火砕流と思われる震動波形の発生回数は,4回(1月2回,2月2回,3月なし)でした。月の発生回数が「なし」となったのは,溶岩ド−ムが出現した1991年5月以来はじめてのことでした。これらの火砕流は,すべて火口南東(赤松谷)方向へ崩落しました。このうち継続時間が最長だったのは1月5日23時49分の90秒の火砕流で,火口南東(赤松谷)方向に約2.5キロメ−トル流下しました。
なお,溶岩ド−ム出現以降の火砕流の発生状況は,第1図のとおりです。
月 | 有感地震 回 数 | 無感地震 回 数 | 総 地 震 回 数 | 微動回数 | 火 砕 流 震動回数 |
---|---|---|---|---|---|
1月 | 4 | 318 | 322 | 60 | 2 |
2月 | 0 | 81 | 81 | 16 | 2 |
3月 | 0 | 15 | 15 | 10 | 0 |
合計 | 4 | 414 | 418 | 86 | 4 |
3 震動観測
この期間の火山性地震・火山性微動・火砕流と思われる震動波形の発生状況の推移は第1表,及び第1図から第5図のとおりで,この期間の火山性地震の震源分布は第6図のとおりです。
なお,ここで用いている地震微動等の回数は速報値であり,振幅と周期のデータは自動験測値です。これらの観測値は後日訂正されることがあります。
(1) 火山性地震
1月
普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)の発生回数は,月全体をとおして1日当たり数回から60回の間で消長を繰り返しながら推移しました。昨年末に引き続き,比較的振幅の大きな地震が含まれ,有感地震も4回観測しました(全て震度T)。これらの地震のなかで,最も大きなものは16日01時33分に震度Tを記録したマグニチュ−ド2.6の地震で,基準観測点(A点、矢岳)での上下動振幅は約42μmでした(第4図)。
また,地震の発生間隔の周期性は,先月に引き続き明瞭さがなくなってきたものの,発生間隔が次第に長くなりながらも(約90時間間隔)継続しました。
1月の火山性地震回数は322回(うち有感地震4回)でした。
2月
普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)は,1月に引き続き消長を繰り返しながら4日まで推移しましたが,5日以降は発生回数が0〜2回と激減し,その振幅も小さくなりました。一方,橘湾や有明海など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)を12回観測しました。
2月の火山性地震の発生回数は81回で,1990年11月の噴火以来,最少となりました。
3月
普賢岳山体を震源とする比較的浅い地震(B型地震)の発生回数はさらに減少しました。一方,有明海など島原半島周辺で発生する比較的深い地震(A型地震)は9回観測しました。
3月の火山性地震の発生回数は15回で,噴火以来最も少ない回数でした。
(2) 火山性微動
この期間,火山性微動の発生回数は,1月60回,2月16回,3月10回と今年に入り大幅に減少しました。これらの火山性微動の大部分は,溶岩の崩落による震動と思われますが,2月26日13時11分と3月9日23時25分及び3月24日07時36分には,比較的深いところを震源とすると見られる「崩落によらない」火山性微動を観測しました。
4 現地観測
(1) 機上観測
・1月25日
溶岩ドーム西部隆起部(第10溶岩ド−ム)の中央部分の恐竜の背中状の隆起は,前回の観測に比べ大きな成長は見られませんでした。ただし,この恐竜の背中状隆起では,縦の大きな亀裂部分から東側が崩落し背が低くなっていました。溶岩ド−ムの他の部分は,特に変化はありませんでした。周囲の火砕流堆積物の状況は,火口南東(赤松谷)方向に,比較的新しい火砕流堆積物が0.5キロメートル付近まで達していましたが,堆積物の幅は狭く,厚みもありませんでした。その他の方向では,新しい堆積物は見られませんでした。
・2月8日,23日
溶岩ドーム西部隆起部(第10溶岩ド−ム)の中央部分の恐竜の背中状の隆起は,前回の観測に比べほとんど成長は見られませんでした。この隆起部の付け根付近には,硫黄が帯状に付着しているのが見られました。また,周囲に新しい堆積物は見られませんでした。
・3月7日,23日
溶岩ドーム西部隆起部(第10溶岩ド−ム)の中央部分の恐竜の背中状の隆起は,雲に遮られ詳細な観測ができなかったが,雲間から観測した限りでは,大きな変化は見られなかった。また,周囲に新しい堆積物は見られませんでしたが,23日には,北東斜面に長さ約300メ−トル程の溝が見られました。
項 目 | 観 測 日 | 小 地 獄 | 大叫喚地獄 | 清七 地獄 | お糸 地獄 |
---|---|---|---|---|---|
泉 温 | 2月14日 | 65 | 93 | 86 | 90 |
3月 7日 | 63 | 90 | 87 | 92 | |
噴気温 | 2月14日 | 96 | 94 | 96 | 94 |
3月 7日 | 96 | 96 | 96 | 96 | |
地 温 | 2月14日 | 97 | 98 | 98 | 97 |
3月 7日 | 98 | 97 | 96 | 97 | |
P H | 2月14日 | 2.1 | 1.4 | 1.8 | 2.2 |
3月 7日 | 2.0 | 2.7 | 1.7 | 2.0 |
5 遠 望 観 測
(1) 遠望観測
1月から3月の遠望観測による噴煙高度の状況は第8図のとおりです。1月は,溶岩ドーム西側の隆起部の南東斜面及び北東斜面が時折崩落し,これに伴う噴煙が上がりました。2月以降は,溶岩の崩落が減ったため,観測された噴煙のほとんどはド−ム頂部付近から上がった噴煙です。なお,この期間の火砕流による噴煙は,夜間や悪天のため観測できませんでした。
6 地殻変動観測
(1) 傾斜計による観測結果
3月9日23時頃と3月24日07時頃に,鳥甲山の傾斜計でごくわずかな傾斜の変化を観測し,いずれも傾斜変動のあった時間頃に「崩落によらない」火山性微動(前述)を観測しました。(4月5日21時すぎにも鳥甲山の傾斜計でごくわずかな傾斜の変化を観測し,このときは火山性地震を観測しました。)
(2) セオドライト(経緯儀)観測よる溶岩ドーム観測結果
この期間のセオドライト(経緯儀)を用いた観測による,溶岩ドームの成長の状況は第9図のとおりです。また,溶岩ドームの最高点の標高の変化は第10図のとおりです。
機上観測により昨年11月から観測されている溶岩ドーム西側隆起部の中央付近の恐竜の背中状隆起は,1月上旬までごくわずかずつ隆起を続け,仁田峠第2展望台観測定点からの稜線観測によると,標高は9日には1500メ−トルとこれまでで最高に達しましたが,1月末以降1499メ−トルでほぼ一定でした(なお,4月5日の観測によると1496メ−トルになっています)。また,新大野木場観測定点からの測量観測によると,2月中旬頃まで溶岩ド−ム西側隆起部の南側の峰がわずかに張り出しているのが観測されましたが,その後は変化はありませんでした。
溶岩ド−ムのその他の部分には,ほとんど変化はありませんでした。
7 降灰観測
この期間(1,2,3月共に),雲仙岳測候所においては,降灰を観測しませんでした。平成2年(1990年)11月の噴火以来,月降灰量が「なし」となったのは平成3年(1991年)7月以来のことです。
8 火山情報の発表状況
平成7年1月1日以降に発表した緊急火山情報及び臨時火山情報は次のとおりです。また火山観測情報は,3月31日までに90号を発表しています。
(1) 緊急火山情報
この期間の緊急火山情報の発表はありません。
(2) 臨時火山情報
平成7年2月6日17時30分 第1号 火山噴火予知連絡会の統一見解