定期火山情報

第1号

平成3年4月12日17時00分
雲仙岳測候所発表
火山名:雲仙岳

 

1 概 況
 普賢岳は昨年の12月から1月の中旬頃まで比較的小康状態を保っていました。1月16日に地獄跡火口の西縁に弱い噴気(地獄跡火口西縁噴気と命名,地獄跡火口底の北西約100メートルの地点)が上がっているのが確認されました。1月30日には,地獄跡火口で再噴気及び噴湯現象が確認されました。2月12日には普賢神社付近の新しい火口(屏風岩火口と命名,普賢岳山頂から東北東約500メートル、標高1315メートルの地点)から噴火し,灰白色の噴煙を300から500メートルに上げました。その後も火山灰の噴出は2月末頃まで続き島原半島の広い範囲で降灰がありました。
 雲仙岳測候所構内では,2月12日から13日にかけて17.6g/m2,2月17日から18目にかけて5.0g/m2の降灰を観測しました。3月に入って中旬頃までは比較的小康状態でしたが,3月16日には屏風岩火口から火山灰の噴出が観測され,3月23日の遠望観測では仁田峠で降灰が観測されました。このころから,噴煙活動は短い周期で消長を繰り返すようになり,3月29日には地獄跡火口,九十九島火口,屏風岩火口から噴煙を上げ,屏風岩火口から火山灰の噴出が観測されました。4月9日11時43分には,地獄跡火口,屏風岩火口が噴火し,地獄跡火口からは黒灰色の噴煙を高さ500メートルに上げ,拳大から半身大の噴石を約100メートルの高さまで上げました。
 一方地下活動は1月中旬頃から活発化し,1月15日に普賢岳の西南西6キロメートル付近を震源とする群発地震が発生しました。1月25日には昨年11月27日以来の火山性微動を観測し,火山性微動はそれ以降頻繁に観測されるようになりました。2月13日から14日にかけては,普賢岳の西南西4キロメートル付近を震源とする群発地震が発生しました。2月27日から3月1日にかけては,普賢岳の南西4キロメートル付近を震源とする群発地震が発生しました。また,3月3日から4日にかけては,普賢岳の西4キロメートル付近を震源とする群発地震が発生しました。3月中句は小康状態でしたが,3月下旬に入ると噴煙活動と対応した連続微動が観測されるようになりました。
 このように,表面活動及び地下活動は消長を繰り返しながらも活発な状態が続いていますので今後の火山活動に十分注意してください。

2 震動観測
 1月15日の群発地震は,05時から20時までの間に,震度3を1回,震度1を1回を含む196回の地震を観測しました。2月13日の群発地震は,20時から24時の間に震度2を2回,震度1を2回を含む82回の地震を観測しました。2月27日からの群発地震は,2月27日20時から3月1日の12時までに震度3を5回,震度2を6回,震度1を26回を含む494回の地震を観測し,1連の群発地震の地震回数としては1984年8月の群発地震以来のものでした。3月3日の群発地震は,3日11時から4日11時までに震度3を2回,震度1を8回を含む327回の地震を観測しました。
 火山性微動は,昨年11月28日以降観測されていませんでしたが今年1月25日から再び観測されるようになり,1月に15回,2月に136回,3月に98回観測されました。また,3月後半から,連続微動がときどき現れるようになりました。
 この期間の火山性地震及び火山性微動の回数は第1表のとおりです。

第1表 火山性地震及び火山性微動回数
有感地震回数無感地
震回数
総地震
回 数
微 動
回 数
震度1震度2震度3合計
1230033994020
1521856357115
2338546891937136
316322171473598
合計571387825672645249

3 現地観測
 火口の現地観測を1月16日,1月27日,2月6日,2月8日,2月12日,2月16日,2月27日,3月6日,3月13日,3月19日,4月4日,4月8日に行いました。
 (1)地獄跡火口
 地獄跡火口は,12月に入ってから小康状態を保っていましたが,1月16日に地獄跡火口底の北西約100メートルの斜面より,幅10メートル,長さ5メートルの範囲で,数カ所から高さ1メートルくらいに噴気がゆっくりと上がっているのが確認されました。1月30日には,地獄跡火口底の南東部で数カ所からの噴気と噴湯現象が確認されました。また,砲台跡からゴボッゴボッという噴湯音が聞こえました。3月29日には遠望観測により,昨年の11月17日以来の噴煙を上げているのが確認されました。4月4日には地獄跡火口底は土砂により平坦な状態になっており,一面から湯気が上がっていました。4月8日及び4月9日の観測では火口底に4つの火孔があるのが確認され,4月9日11時43分には地獄跡火口,九十九島火口が噴火し,地獄跡火口からは黒灰色の噴煙を高さ500メートルまで上げました。
 (2)九十九島火口
 九十九島火口の噴煙は,2月上旬頃まで,30から200メートル位の間で推移し,火口の状況にも大きな変化はありませんでした。2月9日には噴煙の勢いが弱まっているのが確認されました。噴煙はその後も消長を繰り返しています。
 (3)屏風岩火口
 2月12日に普賢岳の東北東約500メートルの地点で噴火し,屏風岩火口と名付けられました。2月12日の現地観測では,普賢神社付近で30センチの降灰を観測し,火口からは2〜3センチの火山れきを100メートルの範囲に飛ばしていました。2月16日には,普賢神社の境内で降灰の深さは約60センチでした。2月27日も噴煙に火山灰が含まれおり,火口がすり鉢状になっているのが確認されました。3月13日には,火口の北側100メートルくらいにわたって10数カ所から噴気が上がっていました。3月19日には,火山灰を含んだ噴煙を上げており,火山れきを周囲50メートルくらいに飛ばしていました。4月4日の観測では九十九島火口付近で降灰を観測しました。
 (4)温泉観測
 雲仙地獄,小浜温泉の現地観測を実施しました。主な地点の観測結果は第2表のとおりで,特に大きな変化はありませんでした。

第2表 温泉地獄観測表
月 日小 地 獄大叫喚地獄清七地獄お糸地獄
泉 温1/1674℃96℃96℃87℃
1/3183℃−−−−−−
2/26−−97℃93℃−−
3/5−−96℃96℃−−
4/582℃97℃98℃94℃
噴気温1/1679℃97℃95℃95℃
1/3179℃−−−−−−
2/26−−98℃98℃−−
3/5−−97℃99℃−−
4/596℃98℃98℃84℃
地 温1/1697℃98℃96℃98℃
1/3185℃−−−−−−
2/26−−97℃98℃−−
3/5−−98℃100℃−−
4/582℃97℃98℃94℃
P  H1/162.0 1.2 4.2 1.8
1/312.1 −−−−−−
2/26−−1.5 3.2 −−
3/5−−1.4 5.2 −−
4/52.0 1.3 2.6 1.5


 (5) 井戸の水位
 小浜町山領における井戸の水位観測の結果は第3表のとおりです。(水面までの深さ)
第3表 井戸の水位
月  日1/172/72/143/204/5
深さ(m)9.2 9.3 9.3 9.0 8.7

4.噴火回数
 雲仙岳は,11月17日の噴火以来,第4表のとおり噴火しています。

第4表 雲仙岳の噴火回数
番 号継 続 期 間
11990年11月17日〜11月23日
21991年 2月12日〜 2月27日
33月16日〜 3月20日
43月23日〜 3月23日
53月29日〜 3月29日
64月 3日〜 4月 3日
74月 3日〜 4月 4日
84月 9日〜 4月 9日

 なお,12月以降雲仙岳測候所が発表した臨時火山情報は次のとおりです。
 第11号 12月12日17時00分発表
 第 1号 1月15日16時30分発表
 第 2号 1月25日19時00分発表
 第 3号 1月30日16時30分発表
 第 4号 2月12日09時15分発表
 第 5号 2月12日13時30分発表
 第 6号 2月12日19時00分発表
 第 7号 2月13日22時00分発表
 第 8号 2月13日23時30分発表
 第 9号 2月26日17時00分発表
 第10号 2月27日21時05分発表
 第11号 2月27日22時00分発表
 第12号 2月27日23時10分発表
 第13号 3月 3日12時20分発表
 第14号 3月 3日13時10分発表
 第15号 3月29日20時00分発表
 第16号 4月 3日13時50分発表
 第17号 4月 9日14時00分発表