2011年東北地方太平洋沖地震における当センターの対応について

九州大学 地震火山観測研究センター


 2011年(平成23年)3月11日に三陸沖から茨城沖にかけての広い範囲でマグニチュード9.0の巨大な地震が発生しました.高さ15mをこえる津波が発生し,多くの被害がでました.甚大な被害を受けられた全ての皆様に,心よりお見舞い申し上げます.また被災地において,懸命に救援活動にあたっておられる関係の皆様に感謝いたします.

 今回の震災に関して,当センターでは以下の調査研究および支援を行っています.


1.衛星通信テレメータ装置による地震観測データの送信

 今回の地震により,東北地区の多くの地震観測点のデータが止まり,地震の情報を得ることができなくなりました.そこで,九州大学では,北海道大学,東京大学,名古屋大学,京都大学と共同で,臨時の地震観測点を5点設置することになりました.現地は通信回線や電源が途絶えているため,通信経路として衛星通信を用い,電源としてバッテリーと太陽電池を使います.
 当センターでは地震が発生した翌日12日に衛星通信テレメータ装置を積んだ公用車で松島准教授と松本准教授を現地に派遣しました.神戸・新潟経由で14日朝に仙台に入り,孤立状態であった東北大地震・火山噴火予知研究観測センターにおいて,現地の状況を確認しました.その後,宮城県北部の栗原市瀬峰地区に地震観測点を設置し,地震データの送信を始めました.衛星に打ち上げられたデータは東京大学を経由して全国の大学に配信されるほか,気象庁にも送信されて地震監視業務に使われています.
 また,燃料不足で調査に出ることができない東北大学公用車にガソリンを提供するとともに,センターに泊まり込みで観測機器の復旧に務めている職員や学生のために,途中の店舗で少しずつ買いそろえた米や果物,パン,飲料水などを提供しました.


・栗原市瀬峰に設置したVSAT(衛星通信)地震観測装置

・20:30に設置完了.背後は長崎ナンバーの九大公用車.

・東北大地震・噴火予知研究観測センターは,平屋のセミナー室に避難していた.

・センターの屋外には多くの地割れができている.
  

・東北自動車道にて陸上自衛隊第16普通科連隊(長崎県大村市)の災害派遣隊に遭遇.20年前の雲仙普賢岳噴火の際には,5年間の長きにわたり災害派遣でお世話になった.ご苦労様です.

・東北自動車道はいたるところで道路が破損しているが,緊急車両の通行のために徹夜で補修作業が行われている.高速道路は災害時の物流幹線としてきわめて重要である.
 


2.海底地震観測による余震活動調査

 今回の震災では,三陸沖から茨城沖の海底で大きな地震が発生し,また活発な余震活動も発生しています.九州大学では,北海道大学・東北大学・東京大学・千葉大学・鹿児島大学と共同して,震源海域に自己浮上式海底地震計を設置し余震観測を行います.観測データを解析することにより,正確な余震の空間分布を求め、震源断層の位置・形状を明らかにし,今回の巨大地震の発生様式を解明する計画です.また、余震発生の時間変化、余震 の発震機構解の時空間変化を明らかにします.
 九州大学では11台の海底地震計の整備を終え,調査船の出帆港のある横須賀に移送を終えています.3月24から31日の日程で,植平助教が設置に向かう予定です.


・九州大学の自己浮上式海底地震計(OBS)