火山観測指針(観測編)

第1編 総論

第4章 火山情報

 気象庁で行う火山情報の発表は、火山の噴火あるいは異常現象の発生による災害を極力軽減することを目的としており、気象業務法(昭和27年法律第165号)第11条及び活動火山対策特別措置法(昭和48年法律第61号)第21条第1項の規定に基づき発表している。

気象業務法(昭和27年法律第165号)第11条

 「気象庁は、気象・地象・地動・地球磁気・地球電気及び水象の観測成果並びに気象・地象及び水象に関する情報を直ちに発表することが公衆の利便を増進すると認めるときは、放送機関・新聞社・通信社その他の報道機関(以下単に「報道機関」という)の協力を求めて、直ちにこれを発表し、公衆に周知させるように努めなければならない。」

活動火山対策特別措置法(昭和48年法律第61号)第21条第1項

 「国は、火山現象に関する観測及び研究の成果に基づき、火山現象による災害から国民の生命及び身体を保護するため必要があると認めるときには、火山現象に関する情報を関係都道府県知事に通報しなければならない。」

4.1 火山情報の規則及び要領

 気象官署において行う火山に関する情報の発表は、火山情報取扱規則及び要領の定めるところによって行う。規則及び要領の内容については、気象法規観測編を参照のこと。
(1)制定と改正の経過は以下のとおりである(平成11年3月現在)。

・火山情報取扱規則

   昭和53年12月20日気象庁訓令第17号
改正 昭和59年6月26日庁訓第8号
〃  昭和63年6月15日庁訓第11号
〃  平成2年6月8日庁訓第5号
〃  平成4年3月30日庁訓第9号
〃  平成5年4月21日庁訓第9号
〃  平成7年3月31日庁訓第3号
〃  平成7年3月31日庁訓第4号
〃  平成9年8月29日庁訓第10号

・火山情報取扱要領の制定について(気象庁観測部長依命通達)

   昭和55年4月9日気地第84号
改正 昭和59年6月26日気地第111号
〃  昭和63年6月15日気地第141号
〃  平成2年6月8日気地第175号
〃  平成3年5月1日気地第160号
〃  平成5年5月6日気地第165号
〃  平成7年3月29日気地第117号
〃  平成8年10月21日気火第72号
〃  平成9年8月29日気火第71号

(2)火山惰報の業務についての主な経過は、以下のとおりである(平成11年3月現在)。


昭和40年1月1日火山情報の発表を業務化(「火山情報発表要領」(昭和 39年11月11日通達気官第228号)により実施)
昭和53年4月26日活動火山対策特別措置法が改正施行され、その中で火山情報の都道府県知事への通報が定められる
昭和53年12月20日火山情報取扱規則を制定(「火山情報発表要領」にかわるもの)
昭和54年1月1日火山情報取扱規則を施行
昭和55年4月9日火山情報取扱要領を制定(「火山情報取扱規則」の細則)
平成5年5月11日火山情報の名称変更等の実施火山活動情報を緊急火山情報に名称変更し、火山観測情報を新設

4.2 情報発表のための資料の作成

 火山の異常を事前に速やかに探知し、適切な情報を発表するためには、毎日の観測資料を整理し、解析を進めておくことが肝要である。このためには、観測値を図や表に記入し、現況が分かるようにしておくのが良い。これは、火山の静穏時においても、また、活動時にあっても、その消長・推移を知るために是非必要である。このようなワークシートについては、「火山観測指針(参考編)第2編資料解析」に述べてある。

4.3 情報発表の時期

 火山情報発表の時期は火山情報取扱規則ならびに同要領による。

4.4 情報文の作成及び出し方

 情報は、一般公衆の不特定多数に対して発表されるものであるが、特に噴火の影響を直接蒙る地元住民へのことを十分考慮して作成しなけれぱならない。

4,4.1 作成の要点

(1)文体は口語体で、平易な用語を使用し、わかりにくい専門用語はできるだけ使わない。
(2)表現方法に注意し、誤解を生じるような言葉や文章にならないようにする。回りくどい言い回しは誤解を招くもとになる。
(3)その地方だけの方言、特異地名、固有名詞などはなるべく使用しない。どうしても使用しなけれぱならないときは注又は解説を付ける。
(4)当該火山の活動の一般的特徴・過去の火山活動・最近における活動のすう勢などの説明、あるいは火山現象などの解説文を付加することも有効である。
(5)観測値(地震回数・振幅、温度、ガス量など)をそのまま文中に入れる場合は、前回発表のものとの関連について説明を加えておく。異常時には、人々がこれらの観測値の変化に対して極めて敏感になるので、不必要な人心不安を助長させることもある。発表の時点における社会状態を良く把握して、適切な表現を用いる。
(6)噴火があったときは、原則として、遅滞なく発表するが、この場合の本文には次の事項を含める。発生時刻・場所・規模・様式のほか、火山性地震・微動、鳴動、爆発音、降灰などの状況。
(7)登山禁止や立入り禁止の措置を取るのは地元の行政機関の権限に属することであるから、このようなことに関連したことは本文中にはなるべく含ませないようにする。
(8)本文中に部外から得た情報を引用する場合は「……からの情報によれば……」とか「……の住民の目撃したところによれば……」など出所を明らかにしておく。

4.4.2 情報の出し方

 情報の発表は、それが公衆の利便になることを主目的とするが、その方法を誤ると、目的に反した結果をもたらす場合もある。以下出し方の要点について述べる。

(1)緊急を要しない定期火山情報は文書郵送でも良いが、急を要する場合は、電話などにより、時期を逸しないよう関係機関に通畑する。この場合、送受信者名、送信時刻の確認を必ず行っておく。
(2)情報を発表したときは、その内容を上級官署及び関係の気象官署に直ちに通報するなど、部内の連絡を密にしておく。
(3)情報の発表は、原則としては現地の火山担当官署が行うが、社会的影響が現地のみに留まらない状況になって、上級官署が情報発表を行うことになった場合、上級官署で作成する情報の内容は、常に現地官署と十分連絡を取った上で決定する。

4.4.3 部外への運絡

 災害防止の効果を上げるためには、気象官署の情報を部外機関及び報道機関を通じて、公衆に周知徹底させることが必要である。特に、地元の行政機関は立入り禁止・交通遮断・避難などの処置を取るが、それらはすべて火山情報をもとにする場合が多い。このため、これらの機関と密接な連絡を取ることが必要である。

(1)情報連絡は、異常事態の発生時にはできるだけ早く行わなけれぱならないので、伝達通知先との連絡方法は平常時から十分整備し、系統図などを作成しておく。

(2)市町村に災害対策本部が設置された場合は、連絡員を本部に派遺し、官署との連絡を確保することに努める。この場合、一般電話は混雑して使用できない状況も起こるので携帯無線電話機などを用意することが望ましい。
(3)異常現象発生時又は大規模な噴火の後では、しばしばデマが発生する。地元の行政機関などと協議し、速やかに手を打つように努める。また、地元住民に対しては、平常時において、火山に関する知識を機会あるごとに広報普及しておくことが必要である。
(4)火山地域に発生する異常現象の発見は、地元住民からの情報によることが多い。入手したならば、必ず踏査を行ってその現象を確認する。しばしば火山活動とはまったく無関係なものがある。
(5)噴火による災害が広範囲にわたって起こるときは、国及び地方自治体の地方出先機関にも関連する事項が発生するので、判ったならぱこれらの機関との連絡を密にする必要がある。特に、災害地には自衛隊が支援にくる場合が多いので、これらの部隊とも連絡を密にするよう努める。

4.5 通報・伝違・報告

4.5.1 伝達等の経路

 規則第6条及び7条による通報・伝達・報告の一般的な経路は下図のようになる。

┌────┐       ┌────────────┐
│ 知事 │   ┌──→│県市町村等地方公共団体 │
└────┘   │   └────────────┘
  ↑      │   ┌──┐
  │〈通報)  ├──→│警察│
  │      │   └──┘
┌─┴──┐   │   ┌──┐
│通報官署│   ├──→│報道│
└────┘   │   └──┘
  ↑      │   ┌────────┐
  │      ├──→│その他の部外機関│
  │      │   └────────┘
┏━┷━━┓   │   ┌────┐     ┌─────┐
┃発表官署┠───┼──→│隣接官署│────→│隣接県知事│
┗━━━━┛   │   └────┘ 〈通報)└─────┘
         │   ┌────┐
         ├──→│関係官署│
         │   └────┘
         │   ┌─────┐
         └──→│管区・本庁│
         (報告)└─────┘

(注:通報官署と発表官署は同一官署の場合がある。)

4.5.2 通報・伝達・報告の手段

(1)通報及び伝達の手段については規則・要領には特に定めはない(ただし、要領の別記様式第1の通報・伝達記録簿の注に手段の例示がある)。現在のところ、多くの官署では同送装置、電話、加入電話FAX、電報等を用いている。
(2)管区・本庁への報告(規則第17条)は要領7により電報又は加入電話FAXを用いる。

4.5.3 全国の航空気象官暑への火山情報の伝達

 航空機の噴煙対策のため、カザンレンラク電報(JM802)のうち噴煙等に関する内容のものは、名宛カクコウクウにより全国の航空気象官署に配信することになっている(なお、これに加えカザンカンソク電報JM801、サイスモカザン電報JM109がテーブル配信されている)(昭和62年11月26日付気業第521号)。今後もこの趣旨による伝達を行うため、次の方法で火山情報の伝達を行う。

(1)臨時火山情報及び緊急火山情報は、従来どうり必要に応じ名宛カクコウクウを付したカザンレンラク電報を発信する。
(2)火山観測情報は、大きな噴煙に関する内容が含まれることは少ないと考えられるため、航空関係者に必要と考えられる噴煙等に関する部分のみをカザンレンラク電報で発信する(基準下記)
(3)この場合の名宛は本庁・管区・カクコウクウ・その他必要な官署とする。

《火山観測情報を航空気象官署等宛電報発信する基準》
 具体的な墓準については別途指示するが、おおむね下記の場合に一部又は全部をカザンレンラク電報で報ずる。

(1)高い噴煙に関する情報が含まれている場合
(2)本庁が指示する場合

例文
「火山観測情報第×号(抜粋)、×月×日×時×分気象台発表、火山名××、遠望観測により×日×時×分灰色、高さ××m,X×方向、×日×時×分高さ××m…………の噴煙を観測した。」