「雲仙」噴火活動か

熊本日日新聞 1990(平成2)年11月17日朝刊

観測体制強化進む 1年続く群発地震  ”島原大変”以来200年ぶり

 長崎県島原半島の雲仙火山は約200年の沈黙を保ってきたが,最近になって噴火活動につながるとも考えられる観測データが得られ,関係者は警戒を強めている.すでに福岡管区気象台火山機動観測班が現地入りして基礎調査を行っているほか,今月末までには全国の国立大学の観測機関が共同で観測にはいるなど体制の強化が進んでいる.

 九州大学島原地震火山観測所(太田一也所長,島原市)や気象庁雲仙岳測候所(花田簡輔所長,小浜町雲仙)の観測によると,昨年11月に橘湾を震源とする群発地震が発生.12月から今年6月までは数が減ったものの7月には震度3の有感地震6回を含む922回を記録,今月も13日までに280回以上の地震を観測している.
 群発地震は5年ぶりだが,
(1)震源が地震の巣といわれる橘湾から雲仙火山の主峰普賢岳(標高1,359メートル)直下の浅いところに波状的に移動を繰り返している.
(2)7月からマグマの動きを示すといわれる火山性微動が観測されるようになった.
(3)普賢岳直下で地震波の減衰がみられ,マグマと考えられる液体状の物質があることが推定される.
などの際だった特徴がある.

 これらの現象は雲仙火山で本格的な観測が始まった昭和52年以来,初めて観測された.データを重視した同気象台機動班では先月15日から普賢岳を中心に4カ所に地震計を設置,来月15日まで観測を行っている.また,国立大学の観測機関でも10数台の地震計を配置して来年2月まで精密観測をすることにしており,今準備を急いでいる.
 太田所長は「雲仙では初めて得られた観測データだが,現在の観測網が出来る以前にも発生していた可能性は否定できない.これからどうなるのか,今の時点では何とも言えない.火山性微動の震源決定など,より精度の高いデータが取れるように体制をつくることが急務」と話している.
 雲仙火山は寛文3(1663)年の噴火・溶岩流出,さらに寛政4(1792)年の噴火・溶岩流出が記録に残る.寛政4年の噴火は眉山(標高819メートル)大崩壊を引き起こし,死者1万5千人の大惨事となったいわゆる”島原大変,肥後迷惑”として知られる.

さらに観測必要

久保寺章・京都大学名誉教授の話
 これまでの観測データはマグマと関係しているとみるのが順当だろうが,さらに様子をみる必要がある.例えば火山性微動の振幅や時間がどう変化していくのか,精密観測のデータが注目される.