平成新山(溶岩ドーム)の主な噴気分布とその温度変化


最新データ2009年11月18日

 雲仙・普賢岳溶岩ドーム(平成新山)において熱電対温度計を用いた噴気ガスの温度測定を実施している.
 雲仙・普賢岳では1990年11月17日の噴火開始,1991年5月20日の地獄跡火口からの溶岩噴出以来,高温の火山ガスが地下から噴出している.1992年の測定では,地獄跡火口の西縁噴気火孔からのガスは摂氏800〜820度に達していた.その後の溶岩ドームの成長により,火口は溶岩塊の下約200mに埋もれてしまったが,溶岩塊の隙間から現在も高温の火山ガスが噴出している.
 溶岩の噴出は1995年春には停止したため,同5月より溶岩ドームの噴気帯において火山ガスの測定を実施している.当初は数百度あった噴気ガスの温度も数年間のうちに徐々に下がり,噴気自体が停止してしまったところもある.また,噴気帯以外のドームの表面は完全に冷却しており,冬季には積雪や霧氷の着氷もみられる.
 しかし,中央部の隆起岩体(スパイン)の西側付近ではいまだに200度近いのガス噴気口がみられ,地下ではいまだに高温状態が続いていると考えられている. 
 2009年11月18日測定での最高温度はE点噴気口の摂氏165度であった.E点は溶岩ドーム成長末期に東に傾きながら隆起した尖頂(Spine)の西側の根元にある.この位置はマグマの湧き出し口(地獄跡火口)の直上に相当している. 
 かつてE噴気孔の周囲にはモリブデン化合物である,モリブデンブルーとよばれる鉱物の付着が見られていた.この鉱物は,噴気ガスが生成される火山内部がまだ相当の高温であることを示す.モリブデンブルーは噴気孔内ではきれいな濃青色をなしているが,空気中では次第に白く酸化してしまう.しかし,噴気温度が低下した現在はモリブデンブルーは確認されていない.日本では鹿児島県の薩摩硫黄島火山でもモリブデンブルーが確認されている.
 E点噴気口において北川式ガス検知管を用いて噴気ガスを測定した結果,二酸化硫黄ガスが8-10ppm,二酸化炭素が2500-4200ppm,塩化水素が80-110ppm検知された.硫化水素は検出されていない(2008〜2009年).噴気ガスの99%以上が水蒸気であり,気温が低い時には湯気となってドームの各所から白く立ち上っている. 


  

註:噴気温度は外気温や風,降雨によっても変化するため,数十度の誤差が出る場合がある.


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