第95回火山噴火予知連絡会資料
伊豆鳥島火山の地震活動
九州大学地震火山観測研究センター・山階鳥類研究所

 
アホウドリの島として有名な伊豆鳥島は, 1902年および1939年の大噴火以降,しばしば活発な群発地震活動が記録されていた が,噴火活動は確認されていなかった.1965年の群発地震に際し,気象観測所を閉鎖 して全員撤退したため無人島となっており,定常的な地震観測は行われていない.
2002年8月8日に漁船により白色噴煙が確認さ れ,10日未明には山頂から真っ赤な火柱が立っているのが目撃された.12日には本格 的なマグマ噴火に移行し,アホウドリ監視カメラにも噴火の様子が鮮明に記録されて いる.その後14日には活動が減衰し,21日に噴煙活動が停止していることが海上保安 庁により確認されている.アホウドリは10月?6月に飛来するため,今回の噴火では幸 いなことに直接被害がなかったが,保護監視活動のために研究者が年に3,4回渡島 する必要があり,その安全確認の上でも継続した地震活動監視が必要となった.


 

そこで我々は2002年10月に鳥島西岸の初寝崎にある旧気象観測所近傍の砂礫地に2Hzの上下動地震計を埋設し,データロガー(白山工業製LS7000)を設置して地震活動のモニターを開始した(図1).今回噴火した硫黄山の火口からは約1000m離れている.ロガーの電源は監視カメラ用に設置されている太陽電池を使用し,データ回収も監視カメラ用の衛星携帯電話(NTTドコモWide Star)を共用した.当初は20Hzサンプリング24bitA/Dで連続記録を収録していたが, 衛星携帯電話でのデータ回収に時間がかかるため,100Hzサンプリング18bitA/Dで STA/LTA比を用いたトリガー収録方式に変更した.
 
 
 


観測体制が整った2002年11月16日以降の日別地震回数を図2 に示す.地震活動は非常に消長が激しく,100回以上観測される日がある反面,まっ たく記録されない日も多い.12月〜2月にかけては約10日程度の活動の周期が見られ る.図3に示すこれまでに記録された最大の地震動(2003年1月21日15時47分)でも おおよそ40mkineP-Pであり,かろうじて有感地震になる大きさである.また火山性微 動は観測されていない.また砂礫地での上下動1成分1点観測であるため,立ちあが りやS波が不明瞭で,A型地震であるかは判別できない.このような地震は数日に1回 程度の割合で観測されている.観測される多くの群発地震は図4に示すように周期 3〜4Hz,継続時間が4秒程度の微小な震動である.しかも,群発ごとにほぼ相似波形 のファミリーをなしている.地表に近い浅い場所での地震活動と考えられるが,その 詳細は不明である.なお,これらの群発性微小地震活動にともなった火山活動の変化 はいまのところ特に視認されていない.


今後2003年5月中旬にこれらの微小地震動源を調査するために, 臨時の地震観測(トリパタイト)を実施するとともにGPS基準点の設置や2002年噴出 物の調査を実施する予定である.

図4 2002年12月14日に観測された群発性微小地震の波形例.継続時間が短く, 波形はほぼ相似形である